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Doctor’s voice #1 / 松本太郎先生(南大和病院)

Doctor’s voice #1

前立腺肥大症治療の専門医のメッセージをご紹介します。

 

南大和病院(神奈川県大和市)
泌尿器科部長 前立腺肥大症センター長
松本 太郎先生

 

日本人男性の平均寿命は81歳で、世界で最も高齢化が進んでいます。何歳になっても、人間には「排尿」という行為が必要不可欠です。

 

まず尿は腎臓で造られます。みなさんが水分を多く摂取すると、腎臓で造られる尿の量が増えます。この働きを「利尿」といいます。
出来上がった尿は、腎盂・尿管というパイプを通過して膀胱に溜まります。これを排出するまでの一連の働きが「排尿」です。みなさんも「尿を出すことで老廃物を体外に棄てている」という認識はお持ちの方が多いでしょう。
しかし、もう一つ「排尿」には大切な働きがあります。実はこの膀胱に貯めた尿で、僕らは膀胱と出口につながる尿道を洗浄しています。人間の陰部に存在する無数の菌をおしっこによって出す度に排除しているのです。これらが同時に行われる精巧な仕組みが「排尿」です。

 

高齢者の方の会話の中で「おしっこの勢いが弱いのは年のせいだから」とか「出てさえいれば平気」というフレーズを聞くことがあります。
しかし先に述べた洗浄については、おしっこの勢いが弱い場合に疑問符が付きます。

 

男性が尿を排出する際、勢いが弱くなる病気の代表が前立腺肥大症という病気です。

 

尿道は3つの区間に分かれますが、この3区間のうちの1区間は前立腺という臓器それ自体で構成されています。前立腺が大きく腫れて前立腺の内腔(前立腺部尿道)が閉塞する病気です。明確な原因は未だ不明ですが、加齢に伴いこの病気に罹る方が増加します。また時に尿が出なくなること(尿閉)もあります。

内服薬で症状を緩和することは可能ですが、根本的な治療には手術が必要になります。

もちろん手術にはそれ自体のリスクのみならず、麻酔のリスクも存在します。しかし、それでも敢えて前立腺肥大症で困った患者さんに泌尿器科医が手術を勧める理由は、生命維持に必要不可欠な「排尿」を失うリスクをより重く見積もっているからです。
以前よりも遥かに低侵襲で体に負担の少ない内視鏡手術が可能となった現在、手術を勧めるタイミングが遅くならない様に注意を払っています。なぜなら、膀胱より出口に近い尿道に狭い部分が生じると、その狭さ故のストレスが膀胱に加わります。
膀胱は年齢・神経疾患・薬物による障害により機能が低下しますが、「尿道が狭い」という物理的閉塞でも著しい機能障害を来します。
前立腺肥大症という比較的単純な病気で、排尿する上で最も重要な臓器である膀胱の機能を損ねないようにする為です。

 

排尿はただ出さえすればいいという理解から一歩踏み込んで、勢いの良い排尿の重要性に思いを馳せて下さい

良い排尿は老廃物を体外に排出するのみならず、それ自体が「抗生物質を用いない究極の尿路感染症の予防」であることに気付くべきです。

症状に思い当たる点がある男性は、是非一度泌尿器科専門医にご相談下さい。

 

 

南大和病院 泌尿器科

松本 太郎先生
2023.1.