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Doctor’s voice #2 / 皆川真吾先生(皆川クリニック)

Doctor’s voice #2

前立腺肥大症治療の専門医のメッセージをご紹介します。

 

皆川クリニック(千葉県千葉市)
院長
皆川 真吾 先生

 

『前立腺肥大症のレーザー手術治療(HoLEPとCVP)の紹介』

 

 

前立腺肥大症の症状は主に頻尿や尿の勢いが悪くなる尿勢低下です。

 

前立腺は膀胱の出口にあり、尿道を取り囲んでいる臓器のため、前立腺が大きくなると尿道が圧迫されて狭くなり、尿の出具合が悪くなります。膀胱の出口に栓をしてあるような状態です。また、膀胱を押し上る刺激や膀胱の血流が低下することも報告されており、頻尿症状も生じます。若い人(20〜30歳代)の前立腺の大きさは15ml〜20ml程度の胡桃大と言われていますが、男性ホルモンの影響を受けて年々大きくなり体積が100mlを超える前立腺肥大も少なくありません。50歳前後ころから症状が出る方が多く、内服薬から治療を開始しますが、症状が改善しない場合や重度の排尿障害の場合は手術治療を行うことがあります。

 

前立腺肥大症に対しての手術治療は基本的に経尿道的、つまり尿道から内視鏡を挿入して行う方法が主体です。手術治療を行うとほとんどの患者さんが薬を飲まなくて良くなることがメリットです。

 

前立腺は解剖学的に大まかには内腺と外腺に分かれており、みかんの実(内腺)と皮(外腺)に例えられます。内腺が大きくなると肥大腺腫と呼ばれ、尿道を圧迫します。従来は電気メスで肥大した内腺を削り取っていくTUR-Pという手術がスタンダードでしたが、出血が多く輸血が必要になったり、大きい前立腺には対応が困難になることなどデメリットもありました。

 

前立腺肥大肥大症に対するレーザー治療(核出術・蒸散術)

 

2000年代になると、レーザー治療が日本でも徐々に普及し始め、HoLEPと呼ばれる手術が広まりました。

HoLEPはホルミウムヤグレーザーを使用して肥大した腺腫(内腺)を外腺から剥がし、くり抜くように摘除する手術(核出術)です。ホルミウムヤグレーザーは衝撃波を発生し、その力で剥離して腺腫を”核出“します。核出した腺腫はそのままでは尿道から取り除けないため、いったん膀胱内に移動し、モーセレーターという機器で細かく裁断して吸い出します。

 

HoLEPのメリット

・TUR-Pと比較して出血が少なく輸血のリスクが低い

・確実に肥大した内腺を取り除くため再発が非常に少ない

・他のレーザー手術と異なり大きさに制限が無い(巨大な前立腺肥大症にも対応可能)

・取り出した組織に癌が無いかどうか病理診断できる

 

などが挙げられます。

 

HoLEPのデメリットとしては、手技がやや難しく熟練を要する事や、少ないとはいえ一時的な尿漏れを生じることがデメリットです。

 

レーザー手術には蒸散術があり、CVPを紹介します。前立腺の内側の尿道側からレーザーを照射して組織を蒸散し圧迫された尿道を広げていく手術です。基本的にほとんど出血すること無く手術を進めることができます。HoLEPのように内腺を全て取り除くことは難しいのですが、排尿困難が改善する必用十分に前立腺部尿道を広げることができます。またHoLEPのようにモーセレーターの必要が無いため、手術時間が短く合併症も少ないと言えます。

 

CVPのメリット

・手術時間が短く安全性が高い

・内視鏡が細いため尿道への負担が少ない

・HoLEPと比較して手技が用意で習得しやすい

・尿漏れの合併症がほとんど無い

 

CVPのデメリットとしては巨大な前立腺肥大症には不向きであること、長期的に見るとHoLEPほど再発のリスクが低くないことが挙げられます。

 

また、一般的に前立腺肥大症の手術治療では術後に射精障害を起こすことがデメリットです。前立腺部の射精管を切除してしまうため精液が尿道から出なくなります。健康上は問題ありませんが、気にされる方ではQOLに関わります。HoLEPでは手術の特性上やむを得ない合併症ですが、CVPでは蒸散する範囲をデザインできるため射精障害を回避できる可能性もあります。ただし、逆に十分な尿勢を確保出来ないリスクもあると言えます。

 

手術を行う医師とよく相談することが大切です。

 

 

皆川クリニック
院長
皆川 真吾 先生
2023.8